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2022/12/27 18:58

オリジナルは本物と呼べるのか?

ドイツ軍が使っていたGERMAN TRAINER/ジャーマントレーナーを「本物」とするのなら、
「本物のGERMAN TRAINER/ジャーマントレーナー」を購入するためには、軍の払い下げ品か工場で欠品補充のために余分に製造したものを探すしかありません。
あくまでも、商品化のために製造しているものでは無いからです。

ただし、オリジナルと同一の機材と素材を使用し、当時のドイツ軍の製造時と全く同じままのスペックで商品として製造していた、亡き田中清司が作っていたシューズはオリジナルと呼ぶに相応しく、マルタンマルジェラ/Martin Margielaが敬意を表し「レプリカ」と名付け、製造を続けると約束した程、そのデザインとシンプルな機能美にスキがない仕上がりです。



過去に製造経験があると言われていた、チェコの工場はどうだったか?

では、ドイツ軍のシューズを過去に作っていた「国」だから「本物」だといえるか?____絶対に言えません。

これは以前、タナカユニバーサル社に在籍していた時の、実際に起こった失敗談ですが、、、
亡き田中清司が、自身のブランドであった「CEBO」の製造工場(主にブーツ製造)とその兄弟会社(資本関係のある会社)「TIPA BOTY」工場でGERMAN TRAINER/ジャーマントレーナーを独断で製造したことがありました。

もちろん、自身の持つオリジナルの製造機材一式を持ち込んだのですが、フォルムが変形し、BWソールも剥がれ落ちてしまい、別注先の企業からのクレームの嵐とお客様からの返品要請などが発生し、本当の地獄のような経験をしたことがありました。
この時、ミハラヤスヒロさんとのコラボ商品がパリコレに出品するという話もあったのですが、もちろん、全て返品となり大変なご迷惑をおかけしました。

亡き田中清司の言い訳話としては、
チェコ工場に聞いたところ、過去にGERMAN TRAINER/ジャーマントレーナーを製造したことがあると聞いたので、今までの製造工場から機材を持ち出し、チェコの製造工場に変更した、ということでしたが、
話をよく聞いてみると、実際に製造したチェコの「TIPA BOTY」工場は、本来はナースや医療従事者用のスリッパ製造工場だったそうで、GERMAN TRAINER/ジャーマントレーナーの製造工程内にある、
重要な手作業(ラスティングやアッパーとソールの接着など)の工程を経験したスタッフがいなかったそうです。
言うまでもなくその事件以降は、チェコ生産のGERMAN TRAINER/ジャーマントレーナーの製造はストップしました。

(後日気になり、チェックしたところ「TIPA BOTY」工場は返品のソールが剥がれ落ちる程の悪い品質のGERMAN TRAINER/ジャーマントレーナーをWEBで販売していました)https://www.tipaboty.cz/


田中清司がオリジナルの機材を所有していた訳

過去にドイツ軍用のGERMAN TRAINER/ジャーマントレーナーを作っていた時の機材と素材、それを使っていた工場。作っていた人。
それらがすべて残っていて、今もなお作ることができ、ドイツ軍に納入すれば、それは「本物」です。

しかし、ドイツ軍の入札競争に勝って製造委託を受けても期限が決まっており、製造時期が終わると機材や素材などは全て軍によって処分されます。
ですので、現時点で製造している工場にだけ機材が存在します。

もう一度書きますが、本物のドイツ軍用のシューズを作り終えた工場の機材や素材などは軍によって処分されます。
しかし、何らかの理由により、工場から軍に引き渡される前に機材一式を購入した人物がいます。

それが、デザイナー田中清司でした。

亡き田中清司がウィーン王室御用達ブランドであった「ルーディックライター/LUDWIG REITER」の仕事をしていた際、東欧を中心とした各国に出向き、ミリタリーデザインの研究を始めていました。

それぞれの国の軍服・シューズのデザインや迷彩柄の違い、それらの歴史的な背景などを調べるうちに、某内戦国の戦地にまで入っていき研究を行っていたそうです。

エキセントリックな日本のデザイナーが戦場に迷い込んだ、ということで軍隊に保護され、研究をしているんだと話をすると、軍隊関係者しか入れない施設で古い資料を読ませてもらったそうです。

その頃にミリタリーシューズの製造委託が終わったある工場があり、倒産するという情報を聞き、
「ルーディックライター/LUDWIG REITER」のティルライター氏/Till REITERや、スロバキア工場などの協力のもと、その工場から機材一式を買い上げたそうです。

これが、亡き田中清司だけが世界で唯一、商品としてのGERMAN TRAINER/ジャーマントレーナー を作ることができると言われる理由です。

ちなみに、ですが
所有機材一式が紛失した場合でも問題が起こらないように、保険の意味合いで東欧工場側でも所有しています。



「BW SPORT」はブランド名ではなく、商品名称です。これを詳しく説明します。

以前から、チェコやポルトガル、スロバキア、ポーランド、ボスニアでのGERMAN TRAINER/ジャーマントレーナーの製造は聞いたことがありますが、それ以外の生産国については全く不明です。
また、使用されているソールには「BW SPORT」と刻印されたソールを使用しています。

この「BW SPORT」と刻印されたソールにこだわるのは、現在のドイツ軍のシューズ、本物のGERMAN TRAINER/ジャーマントレーナーに使用されているからです。

また、「BW SPORT」ブランド、とか「BW社のソール」と呼ぶ方もいますが、「KSBW社」の商品であり、「BW」はドイツ連邦軍(BUNDESWHER)の略称のBWです。
ドイツ空軍のトレーニングシューズと言われている商品のソールには本来、「LW」の刻印が本当です。もしも「BW」であれば、それは間違いです。(ちなみに、ドイツ空軍の略称は、「LW」ドイツ海軍の略称は、「BM」です)

「KSBW社」はチェコのズリーンという、靴の歴史には欠かせない街にある会社で、軍隊のシューズやスポーツライフル用のシューズ、トレッキングシューズなどのシューズのソールを製造する会社ですが、ドイツ軍や某国の軍隊からのシューズ製造委託も受けています。



では、本物のGERMAN TRAINER/ジャーマントレーナーは手に入らないのか?

ここで、少しまとめてみると、
本物:現在ドイツ軍が使用しているシューズ
偽物:オリジナル機材不使用、あるいは過去に製造経験があるスタッフがいない。

そうすると、本物を手に入れるには、
1,ドイツ軍からの払い下げ品と、委託製造業者の欠品充当分の出回り品
2,ヴィンテージ品

これは、現実的ではありませんね。

次の選択肢である、オリジナル機材を使用した商品
1,亡き田中清司が製造していた商品
2,義弟である私が、東欧工場と協力して製造した商品(リベルテーク社の商品)
・・・自分で言うと、アレですが、本当のことなので、、、すみません。

次に、亡き田中清司の会社から独立した3名の会社、EYE FOUND社のリプロダクションオブファウンドは、私たちと同じ工場で製造しています。
オリジナルの機材ではなくタナカユニバーサル社のデザインをベースにしていますが、品質は高いです。
(この点については、過去にどなたかが記事にしていたので、このブログを読んでご判断下さいませ)

タナカユニバーサルってドえらい会社だぜ!!https://matome.eternalcollegest.com/post-2148851910904630701

この次にあげるなら、「NOVESTA社」です。
私たちの製造工場の斜め前に工場があり、以前は「NOVESTA社」に製造依頼をしていた経験があり、品質が高いことは実際に触って確かめていますので、知っています。



ここまで読んでくださってありがとうございます。

とても長くなってしまいました。お付き合いして、読んでくださったことに感謝します。
商品の背景にあるストーリーが複雑で、間違ったままの情報があったり、どうしてもこれだけの量になってしまいました。
これでも、まだ説明不足の感はありますので、何か気づいた時には文章をまとめます。
ありがとうございました。